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社会・精神 通信科
#コラム
働きながら社会福祉士・精神保健福祉士を目指す人が増えている理由――家族の物語とセカンドキャリアがつなぐ新しい専門職像
近年、「フルタイムで働きながら」「子育てや介護と両立しながら」社会福祉士・精神保健福祉士を目指す社会人が確実に増えています。背景には、家族に関わるリアルな経験から芽生えた問題意識や、セカンドキャリアとして社会貢献性の高い専門職に舵を切る流れがあります。本稿では、その理由と価値、そして現実的な歩み方を簡潔に整理してみました。
なぜ今、“働きながら学ぶ”人が増えているのか
- 家族のエピソードが原点
親の介護、子どもの発達特性・不登校、家族のメンタルヘルス課題、ヤングケアラー経験など、「身近な誰かの困りごと」を通して支援の必要性に気づく人が増えています。単なる共感にとどまらず、「学び、資格を得て、より適切に支えたい」という動機が強いのが特徴です。 - 価値観の転換と学び直しの一般化
仕事観が「収入」から「意味・納得」へと比重を移す中で、社会的使命の大きいソーシャルワークは選択肢として存在感を増しています。働きながら学べる通信教育課程といった学習手段の広がりも後押しです。 - 実務と学習の相乗効果
現職で培った調整力・傾聴力・課題解決力は、そのまま援助実践の基礎に。日中の仕事で得た気づきを学びに持ち帰る循環が、理解を深め、継続を支えます。
セカンドキャリア×ソーシャルワーク:前職の経験は“強み”になる
- 営業・接客出身:対人関係構築、ニーズの聴き取り、関係調整が武器に。
- 事務・企画・管理職:制度理解、文書作成、会議運営、ケース会議でのファシリテーションに強み。
- IT・デザイン:情報整理、アクセシビリティ、データ活用、教材・広報物づくりで貢献。
- 教育・保育・医療・介護:多職種連携、発達理解、地域資源のハブ役として即戦力。
- 行政・地域活動:制度横断の目線、合意形成、ネットワーキングに長ける。
例)製造業の品質管理出身のAさんは、プロセス可視化のスキルを活かし、支援計画の「見える化」を推進。本人・家族・関係機関の合意形成がスムーズになり、支援継続率が向上しました。
これから価値が高まる理由(社会的需要の視点)
- 少子高齢・単身世帯の進行:医療・介護・地域生活をつなぐ専門職の必要性が一段と高まります。
- こども・家庭領域の拡大:虐待予防、ヤングケアラー支援、不登校・発達特性への理解、里親・社会的養護の支援など、継続した専門的関与が不可欠です。
- 精神保健・こころの健康:職場のメンタルヘルス、依存症、孤独・孤立対策、災害後の心のケア等で、精神保健福祉士の役割が拡大。
- 地域共生・重層的支援:生活困窮、障害、子育て、高齢を横断し「つながり直す」支援が政策的にも推進。制度の狭間を埋めるコーディネート力が求められます。
- 多文化・ダイバーシティ:外国ルーツ、LGBTQ+、障害のある人の就労・学びの合理的配慮など、当事者の声を生かした伴走が不可欠。
総じて、“制度理解+対人援助+地域連携”を統合する専門職として、社会福祉士・精神保健福祉士の価値は今後さらに高まると見込まれます。
おわりに
家族の物語から始まる動機も、キャリアの節目で選ぶ決断も、どちらも尊い出発点です。前職で磨いた力は“異業種の強み”としてソーシャルワークに確実に生きます。社会が複雑さを増すほど、制度と人と地域をつなぐ役割を担う専門職の価値は上がっていきます。
働きながら学び、学びながら現場に役立てる。 その循環こそが、あなたの専門性を最短距離で育て、誰かの“ウェルビーイング”を支える力になります。